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「青い夢の女」MORTAL TRANSFER |
逃げられない官能の記憶。
〈物語〉パリのアパートで診療を行っている精神科医ミシェル・デュランの顧客には、
美しい女性オルガがいた。彼女は夫マックスの暴力に悩んでいた。
彼女の苦悩はそれに快楽を覚える自分に対してだったが、このままだと
殺されてしまうという恐怖を抱いていた。彼女のセラピーをしていたミシェルだったが、
美しい彼女の意外な告白に心がかき乱され、師と仰ぐアーマンドにセラピーを頼むことになる。
まだ若いミシェルにオルガを紹介したのも彼だ。ある夜、いつものように
オルガのセラピーをしている最中、ミシェルは思わず眠り混んでしまう。
夢の中でオルガと戯れるミシェルは彼女を殺してしまう。目覚めたミシェルは、
ソファーのオルガを見る。すると夢の中と同様にオルガは息絶えていた。
果たしてミシェルはオルガを殺してしまったのか。全く自覚のないミシェルは、
とりあえずオルガの死体をソファーの死体に隠し、自分が寝ていた間に
何が起こったのかを検証し始めるのだが…。
http://www.aoiyume.jp/aoiyume/index.html
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★★★★
「IP5」で自ら森の中を彷徨ったかのようなジャン=ジャック・ベネックスの
8年ぶりの新作劇場用映画。予想は外れた。まさかこんなに彼の作品で
笑うことになるとは思わなかった。もちろんブラックな笑いなのだけれど。
主人公は精神科医。だから何をしても一筋縄ではいかない。患者の女オルガが死んでしまった所から、
いかにもフランスの監督らしい展開になる。アメリカ映画だと
全く違ったサスペンスアクションに展開させていただろう。
警察や、彼の周辺の人間がもっと活発に絡んできたに違いない。しかしこの作品は、謎だらけなのだ。
オルガ自体も謎が多いし、彼女の夫も謎だらけ。ミシェルやオルガのことを常に監視している
路上生活者もまた、どこまで事の事実を知っているのか全くの謎なのだ。
果たしてミシェルはオルガを殺したのか。それは最後まで全くわからない。
暗い部屋に閉じこもりセラピーをするミシェルは滑稽に見える。
精神科医にも精神科医が必要だというのも納得の生活をしている。
赤い靴下を彼が履いているのも印象的で、ちょっと平穏でない彼の精神状態を示している。
自分が平常心でないことを自覚じているだけに、オルガを殺したかもしれないというのに
自ら疑いをもってしまうのだ。ベネックスの青の美しさは本作でも健在で、
それがオルガの肌の白さを際だたせる。オルガがとても美しくて、
そりゃあ、気もそぞろになるのもわかる。こんな美しい女が妙な性癖をもっているのだから、
気が気でなくなる。ベッドに下にとりあえず死体を隠してしまうのが面白い。
警察にはもちろん届けられない。圧倒的不利だから。確信がもてない以上は秘密。
死体を隠しながら、そこでセラピーを続ける緊迫感。路上生活者の意味深な言葉と行動。
墓地の怪しい男と行動。オルガの家での夫の行動。ぞくぞくするような謎が
どんどんミシェルを追い込んでいく。首のとれたキリンのぬいぐるみも印象的に使われる。
恋人のエレーヌだけが熱をもったように温もりのある色をしているのが映像的にうまいところ。
見終わってみると、かなりひねってひねって見えるけれど、実はものすごくシンプルな話だと思う。
精神科医が職業病ともいえる罠にはまったといえる。
精神科医なのに、心をコントロールできずにあたふたする姿が可笑しい。
ジャン=ユーグ・アングラードをみていると、髪の毛ふさふさのケビン・スペイシーのように見えた。
複雑だけれど、魅力的な役を演じている。
映画のキーになる路上生活者ヘラストラトスを演じるミキ・マノイロヴィッチの
演技と存在感は出色のもの。こんな人物は本当に混乱させる。彼をセラピーするのは相当大変そう。
オチの付け方もうまい。そして物語全体の香りを決定づけているオルガ役の
エレーヌ・ド・フジュロールの美しさがとにかく際だつ。
映画をみて、映画の通りの精神の旅を監督自身もしたのだろうと思う。